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コラム

■「近ごろ気になること」を書きとめました

「食生活」や「健康・医療」に関して、「近ごろ気になったこと」を書きとめました。「健康情報」ページとは異なり、執筆者(最下段に示す)の意見が反映されています。
バイオガスエネルギーって何?
 今月の【健康情報】にも書いたように、9月中旬に「食と暮らしのフォーラム in Denmark 2003」に参加しました。フォーラムの日程終了後、有志3人で、首都・コペンハーゲンから特急で約3時間半かけて、ユトラント半島にあるグリーンファームエネルギー社を訪問しました。
●豚の糞尿からエネルギーを生産する
 食べるものを食べれば出るものは出る−−これは人間でも豚でも同じ、日本でもデンマークでも同じである。
 グリーンファームエネルギー社は、豚の糞尿を主たる原料としてガスを発生させ(このガスをバイオガスという)そのガスを電気エネルギーに転換して電気会社に売るための設備を開発している会社だ。糞尿だけではなく、不要となった肉骨粉や家畜の死体などをも、原料として使う。
 バイオガス発電は、原子力発電に比べれば効率が悪くて安定性に欠けるためにけっして「儲かる設備」とは言い難い。しかし、誰もが苦慮している家畜の糞尿を処理し、全世界規模で取り組まなければならない地球の温暖化を食い止め、かつ、少なくはあるが収入も上げることができるバイオガスエネルギーに、この会社は、いや、デンマークは国をあげて真剣に取り組んでいる。
 原子力発電のほうが手っ取り早いエネルギー源であることに異論を持つ人はいないであろうが、デンマークは原子力発電を持たないことを国民投票で選択し、非効率きわまりない風力や家畜糞尿と格闘している。
●日本のほうが問題は深刻だ
 日本でも、九州や東北の酪農地帯では家畜の糞尿処理に頭を悩ましていると聞く。このままだと日本人は、家畜のエサを外国から買い、おいしい肉は自分たちで食べ、家畜の排泄物をまた外国へと捨てに行くことを平気でするようになるのではないか。家畜の糞尿処理にコツコツと地道に取り組むデンマークの人たちから学ぶことはたくさんある。
 家畜の糞尿だけではない。毎日、大量の生ゴミや産業廃棄物が排出されている。国土の狭い日本では、埋めたり捨てたりする場所もない。莫大な費用をかけて「ゴミを燃やす施設」を作り、すべて灰にしてしまう計画も進んでいるが、これは「費用をかけてエネルギーの無駄遣いをする」ことに他ならない。同時に地球の温暖化に手を貸すことになる。かつてのように、すべてを「水に流す」方法や、「臭いものにはふた」をする方法では、この国は立ちゆかない状況になっている。日本のほうが問題は深刻なはずである。
 バイオガスエネルギーは、これらのすべての問題を一挙に解決するものではないし、成功すれば多額の利益を生み出すというものでもない。しかし、小さな、そして、とても重要な問題のほとんどが少しずつ改善される手段である。
 取材が終わると、同社の社長が自ら自家用車を運転して駅まで送ってくれた。旧式の小さなマツダの中で、「この設備の最大の長所は?」と聞くと、「ウィンウィンシステム」と答えてくれた。通訳に確かめると、特定の人間だけがすごく“いい思い”をするのではなく、みんなが少しずつ幸せになるシステムなのだという答えであった。(2003/11/1 報告:佐藤達夫)

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