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コラム

■「近ごろ気になること」を書きとめました

「食生活」や「健康・医療」に関して、「近ごろ気になったこと」を書きとめました。「健康情報」ページとは異なり、執筆者(最下段に示す)の意見が反映されています。
「肉食と便秘」の関係を身をもって体験した
●アメリカには「ハンバーガー文化」がある

 2005年3月に、アメリカ合衆国ロサンゼルス郊外にあるアナハイムで開催されたNatural Products Expo West 2005という健康食品展(副題:サプリエキスポ)を視察する機会があった。アナハイムといえば、ディズニーランドがあることと、長谷川滋利投手(現シアトル・マリナーズ)が最初に大リーグ入りしたときのアナハイム・エンジェルスのホームタウンであるということで、日本人にもとてもなじみの深い場所だ。

 NPEW2005の詳細については、6月9日発売の『栄養と料理』7月号(女子栄養大学出版部発行)にレポートが掲載されているので、興味のあるかたはそちらをご覧いただきたい。

 ここでは、滞在期間中の私の個人的な体験を披露したい。

 海外へなどめったに行くことがないので、「外国へ行ったらできるだけその国の人が食べているものを食べよう」と決めている。アメリカといえば、そりゃやっぱりハンバーガーでしょう(偏見を含む短絡的発想をお許しください)。同行した4人はいずれも30代であったため、「肉食は大歓迎」ということになり、4日の滞在期間中、朝食と昼食はハンバーガーを食べることにした(ちなみに、夜もほとんどが肉料理)。

 日本でハンバーガーといえばチェーン店のものしか思い浮かばないのだが、アメリカには高級・中級・低級(?)のハンバーガーがある。味も価格もサービスも、それぞれに違う。どの店もそれなりに利用者があってそこそこ繁盛している。アメリカには、日本では見られない「ハンバーガー文化」があると感じた。

●下痢体質人間が便秘になった

 4日間、肉食中心の食生活を送った結果、私の体には明らかな変化が訪れた。便秘である。私は便秘をしたことがない。もっとはっきりいえば、普段は「毎日が下痢」といっても過言ではない。

 牛乳を飲むと下痢、お酒を飲むと下痢、脂っこいものを食べると下痢、原稿の締め切りが迫ると下痢、辛いことがあると下痢、楽しいことがあると下痢(これは冗談)。自慢ではないが、私の頭の中には、通勤で使っていた東武東上線の各駅のトイレの位置が完全にインプットされている。全部を使ったことがあるからだ。サラリーマンを辞めてフリーになってからは、さすがに駅のトイレを使う頻度は減ったが・・・・。

 さて、アメリカ滞在中、私はほとんど便意を催さなかった。

 健康な人では、直腸に150g程度の内容物が溜まると便意を催すのだという。その結果、普通の人では、1回の大便の量はだいたい150g程度(大きなバナナ1本くらい)になる。

 便意を催さないということは、直腸に150g程度の内容物が溜まらないからである。大便の中身の多くは腸内細菌と食物繊維と水分だ。肉食を続けていると食物繊維が不足するので、一日分の食事を合わせても、便の量がなかなか150gに達しない。そのため便意を催さない。便意を催さないので、直腸に滞在する時間が長くなる。その間に、ドンドン水分が吸収されてしまい、便の重量はむしろ少なくなってしまう。

 それが何度か繰り返されて、便意を催す150gに達するまでには数日を要することになる。数日が経過して、ようやく便の量の総合計が150gに達したときには、最初の便(肛門にもっとも近いところの便)はかちんかちんに固まっている。この状態では、今度は、たとえ便意を催しても、スムーズに肛門を通過することができない。そのため、便秘状態がさらに続く・・・・という悪循環を繰り返すことになる。

 生々しい解説になって恐縮だが、以上が、私の個人的体験に基づく推測である。

●野菜たっぷり料理で便秘が解消

 4泊6日の視察旅行を終え、わが家に帰って普段通りの食事をしたら、翌日から便秘は解消し、いつも通りの量・いつも通りの柔らかさの便に戻った。ちなみに、わが家の食事は大変に野菜が多い(多分一日に350gくらい)。たまに、野菜料理ばかりが並び、思わず「きょうの主菜はどれ?」と聞かなければわからないような、副菜ばかりの献立の時もあるくらいだ。

 それに比べてアメリカの食生活には野菜が圧倒的に少ない。今回はアメリカの一般家庭の食事を経験することはできなかったが、聞くところによると、一般家庭でもアメリカでは野菜料理が少ないのだそうだ。

 書き忘れるところであったが、今回の旅行には「実家がロサンゼルスにあるという珍しい日本人」Kさんが同行した。KさんのおかげでNPEW2005の取材もロス市内の観光もきわめてスムーズにいった。最終日にはKさんの実家で、お母さん(日本人)手作りの家庭料理をごちそうになった。肉も野菜もたっぷりで、おいしく、栄養的にもバランスのとれた日本の家庭料理であった。私の便秘が帰国の翌日から解消したのはKさんのお母さんの野菜料理のおかげもあるに違いない(この場を借りて改めてお礼をいいます。ありがとうございました)。

●アメリカ人にとっての野菜とはフライドポテトとケチャップ(?)

 日本の家庭料理とアメリカの外食を比較して論じてはいけないし、また、私の個人的体験だけで結論を出してはいけないことは百も承知である。しかし、日本の外食とアメリカの外食を比べても、野菜料理は日本のほうが明らかに多い。

 最近、「日本人の野菜消費量が減少し、アメリカ人の野菜消費量が増大したため、アメリカ人の野菜消費量のほうが日本人よりも多くなっている。日本人も健康のために野菜をもっと食べるほうがいい」という話をよく耳にする。個人的体験からすると、納得のいかない論理である(後半はその通りなのだが、前半についてはすなおに同意しかねる。同様に感ずる人は少なくないだろう)。

 アメリカ人の野菜消費量は確かに多くなっている。しかし、アメリカの研究者の中には、アメリカ人の野菜消費で顕著に伸びているのはジャガイモとトマトだと指摘する人もある。しかも、そのジャガイモとトマトの中身をよく見てみると、伸びているのはポテトチップスとフライドポテトとトマトケチャップだという。

 確かにアメリカのファーストフードには、日本人にはとても食べられないくらいのフライドポテトがもれなく付いてくる。使ってあるケチャップの量も並大抵ではない。日米両国の野菜消費量からフライドポテトとトマトケチャップを除くと(除くことにどういう意味があるのかは別にして)、日本人の野菜消費量のほうが多いであろうと推測する。

 日本人の野菜摂取量を今よりも増やす(一日350g程度にまで)ことは健康上とても大切である。しかし、それは「アメリカ人のような食生活をしよう」というわけでは絶対にないということを肝に銘じておくべきである。

(2005年6月1日 佐藤達夫)