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コラム

■「近ごろ気になること」を書きとめました

「食生活」や「健康・医療」に関して、「近ごろ気になったこと」を書きとめました。「健康情報」ページとは異なり、執筆者(最下段に示す)の意見が反映されています。

セブンイレブンの弁当工場見学記

●日本人の4人に一人がコンビニの弁当を食べている


 私がコンビニの弁当を食べるのは2ヶ月に一度くらいだろうか。正直いって、おいしいとは感じないし、ましてや健康にいいとは思えない。ただし、これは「コンビニ弁当情報」に詳しくない人間の感想であって、ヘビーユーザーにいわせれば「○○コンビニの××弁当はおいしい!」という評価もあることと思う。

 その証拠に(なるかどうかは断定できないが)、現在わが国では、毎日、4人に1人がコンビニの弁当を食べている計算になるのだという。

 平成18年3月23日、食生活ジャーナリストの会が計画した「コンビニ弁当工場見学会」に参加したので、その報告をしたい。訪問したのは、主として《セブンイレブン》の弁当を作っている《わらべや日洋株式会社(以下:わらべや)》の相模原工場。この工場は平成14年に新設された、首都圏ではもっとも新しい工場だ(見学会を受け入れるのは、新設された工場であるケースが多い)。

 この工場では、約700人が働いており(そのうち社員は約50名)、米飯弁当を34アイテム(種類)、おむすび24、すし5、パン・サンドイッチ26、チルド総菜16、和菓子9など、合計で120アイテムを超す弁当類を作っている。最大、一日30万食に対応できるそうである。

●セブンイレブンの弁当は中高年が主なターゲット

 工場見学の前に、525円の和風幕の内御膳(写真参照。「御膳」というほどのものではなく「弁当」でいいと思うのだが・・・・)を試食。総エネルギー:631kcal、タンパク質:25.1g、脂質:14.8g、炭水化物:99.3g、Na:1.6g。

 作りたてなので、かなりおいしい(もちろん、味覚評価は私の個人的な感想です)。とりわけご飯のおいしさが際だっている。おかず類は塩味が濃い。普通は、製作後数時間以上が経過してから食べられることになるのであろうから、細菌数の増加を抑えるために、この程度の味付けは仕方ないところだろう。あるいは、もしかしたらこのくらいの濃い味のほうが一般的なのかもしれない。

 和風幕の内御膳の中身が「中高年者向き」であることに驚いたのだが、この工場が出荷しているセブンイレブンでは、お弁当購入層のターゲットを40〜50代と考えているのだそうだ。エッ? コンビニのお弁当購入ターゲットって「若者」じゃなかったの? そういわれて店頭で観察し直してみると、セブンイレブンの弁当は幕の内以外でも中高年向きのものが少なくない。

 担当者の説明によると、コンビニの場所やその会社の方針にもよるが、弁当を購入する人には中高年者が多いのだという。どうりで、試食した弁当の量が少ない(私にはちょうどいい)はずである。

●まるで手術に臨む外科医のごとく、ていねいに手を洗わされる

 今まで、食品工場の見学は何度も経験している。どの工場でも、衛生管理が厳しいので、見学者は服装などを細かくチェックされる。今回のわらべやは、今までの工場見学の中でもっとも服装チェックが厳しかった。それだけ、衛生管理に気をつかっているということなのだろう。

 最近、学童や一般市民に工場見学をさせることが流行(?)している。大手の食品工場では、わざわざそのために「見学コース」を設けているところもある。工場の現場に立ち入ることなく、食品の生産工程が、ガラスの外から見えるようになっているのだ。

 わらべや相模原工場にはそのようなコースが設けられていない。そのため、見学者は食品の生産現場に直接入ることになる。衛生管理が厳しいのは当然で、そうでなくては困る。

 まず、時計・指輪・イヤリングなどを外される。これらの装飾品と皮膚との間は細菌の温床なのだ。その上で、見学用白衣、キャップ、マスクを着用。目だけしか出ていない状態になる。さらに靴を履き替える。

 この状態で顔や手など、表に出ている部分に傷がないかどうかをチェックされる(手などの傷には黄色ブドウ球菌が大量に付着しているため)。次には手の消毒。まるで、テレビドラマで手術に臨む外科医の要領で手を洗わされる。最後にエアシャワーを浴びて、やっと工場内に入れるというしだい。

 ちなみに、工場見学の前にトイレを使わせてもらったが、この工場内のトイレは、用を足したあとに、石けんで手を洗いさらにアルコール消毒をしないとトイレのドアが開かない(のでトイレから出てくることができない)。

●「安全でおいしいご飯」は徹底した衛生管理と温度管理から生まれる

 工場内は、予想以上に従業員数が多い。特に「総菜」のラインと、「弁当の盛りつけ」のラインは、人海戦術とも呼べるほど、多くの人が働いている。衛生管理がさぞかし大変だろうと推察する。

 よく見ると、従業員はラインごと(役割ごと?)に、身につけているエプロンの色が異なっている。それは細菌の交差を防ぐためだという。たとえば、加熱前の食材(細菌数が多い)を扱う人と、最終盛りつけを担当する人が接触したりしないように工夫されている。

 わらべやは「ご飯もの」を得意としているらしく、ご飯のおいしさにはこだわりを持っているのだという。ご飯は摂氏17度以下になるとβ化してしまい、電子レンジなどで温めたとしても「明らかに味が落ちる」のだそうだ。かといって、炊いたご飯を長時間放置しておくと細菌の増殖が進行する。そのため、炊きあがったご飯は30分以内に22度以下まで温度を下げる(ただし17度以下にはしない)。このあたりの温度管理と衛生管理のかねあいのノウハウが「安全でおいしいご飯」を提供するポイントのようである。

 工場内の様子を細かくレポートしているときりがないので、興味のある人は会社案内などをご覧いただきたい。

●願わくば情報公開に「もうひと親切」を!

 工場見学後の印象としては、衛生管理はきわめて厳格で安心できたこと、生産現場には予想以上に従業員数が多くて人手がかかっていること、「炭火焼き」では本当に炭を使っているなど作りがていねいなこと、ご飯のおいしさへのこだわりが感ぜられたことなどを上げることができる。

 これほどまでに衛生管理に気を配っていても、異物混入(毛髪が入ってしまうなど)は防げないのだというから、苦労が忍ばれる。ただし、わらべやでは今までに衛生管理上の事故はない(危険率として数値に上がらないほどに少ない)のだそうだ。

 今回の工場見学で残念だったことは、添加物(食品添加物)を使っている現場を見られなかったこと。セブンイレブンの弁当類には添加物が使われているので、できればそこも見せてもらいたかった。

 見学後、「添加物は使っていますよね?」という質問に対して、担当者から「保存料や合成着色料は使っていません」という回答があったが、これも残念だったことの一つ。セブンイレブンの弁当には、保存料は使っていなくても保存の役割をする添加物(pH調整剤等)は使ってあるはずだし、合成着色料は使っていなくても着色目的の添加物は使ってあるはずだから(ちなみに、現在、「合成添加物」「天然添加物」という言葉は使われていない。添加物は「指定添加物」と「既存添加物」の2つに大きく分類されている)。

 私は、個人的には「法律の範囲内で最低限使われる添加物は、健康にはほとんど害を及ぼさない」と考えている。しかし、工場見学会で添加物の使用現場を見せなかったり、弁当類の表側に「保存料・合成着色料不使用」と目立つように表示してあるのは、いかがなものか(裏の原材料蘭を見ると保存目的の添加物や合成ではない着色料が使われているものであるにもかかわらず)。

 衛生管理やおいしさ追求が徹底している工場であっただけに、残念なことであったように感ずる。

 ついでに、注文をもう一つ。セブンイレブンの弁当類には栄養価(熱量・蛋白質・脂質・炭水化物・Na)が表示してある。それはそれでとてもありがたいのだが、最後のNaは食塩に換算して表示してほしい。たとえば「Na 1.6g」というのは食塩に換算すると約4.1gになる。成人病世代の人が知りたいのは「食塩摂取量」なのだから・・・・。せっかく情報公開するのなら「もうひと親切」をお願いしたい。


(平成18年5月8日 佐藤達夫)